仮面騎士日記

仮面ライダーの研究、あるいはそこから派出する研究・考察についての記録です。

仮面ライダードライブ #1

#1 俺の時間はなぜ止まったのか

冒頭はグローバルフリーズの様子から始まる。このシーンは後々まで「どんより」とは何か、ということの描写に用いられることになる。仮面ライダーシリーズは、放送開始当初はCGなどが豪華だが、後々徐々に単純化されていくという風潮があり、当初時にこのシーンを撮影したことには良い効果があったと思われる。

その後、泊が誤射し早瀬を怪我させることになる。これが彼自身のトラウマとなる上、彼が相棒を失うきっかけになる。

そのグローバルフリーズの夜、人々を救ったのが仮面ライダーやシフトカーらであり、その活躍も映像効果を使って多彩に描かれる。ただしこの段階ではコアまでは破壊できていない。

この当初の仮面ライダーの正体はチェイスであるが、この点についてはその事実が明かされる話で触れる。

冒頭から泊はトライドロンに乗車している。この時点で「どんより」が広く人口に膾炙していることがわかる。泊の頭の中も「どんより」と形容される。

仕事をサボる泊のもとに霧子がやってきて確保する。すでに特状課が結成されており、本願寺課長も登場する。この際、本願寺が占い好きであること、究がネットワーク研究家であること、りんなが科学者であること、追田が捜査一課の人間であることが紹介される。

トライドロンの中で「考えるのはやめた」と言う泊だが、そこには既にベルト(クリム)がいる。クリムは泊に変身するよう求めるが、後日明らかになる通り、この段階で本願寺とクリムの間で戦士は泊という合意がなされている。

連続殺人未遂事件が紹介されるが、公園に不審な男が現れるシーンが挿入される。

出動したがらない泊に対して、「運転も変わろう」とクリムが運転を始める。これはトライドロンがクリムそのもの、あるいはその肉体の代替と言うことができる、大切な描写である。

赤くなった肉体が運び出されるシーンに泊が出くわし、そこで紙の切れ端を見つける。その瞬間、あたりをどんよりが襲い、男が現れる。男はロイミュード029に変態し泊を襲うが、そこにクリムの呼びかけに合わせてやってきたシフトカーが到着する。

既にグローバルフリーズのシーンを見た視聴者は、このシフトカーに見覚えがある、ということになるが、シフトカーがクリムの「仲間」というような描写をされることで(クリム自体は「君(=泊)の(仲間)さ」という言い方をするが、これによって間接的にグローバルフリーズの際戦っていたライダーやシフトカーとクリムの関係性が示唆されることになる。

追田とりんなが出会うことになるが、追田は当初妻と子供がいるという設定だったという話もあり、この時点で恋愛関係に発展しうる描写は意図的には行われていなかったと考えられる。

「他人の運転は信用できない」という泊のセリフは、「運転」に対する特別な思い、それからこの後登場する「ひとっ走り付き合えよ」というセリフとも相まって変身後のフォームを運用することを「運転」を捉えられる可能性を示唆する。また、後のタイプトライドロンではクリムと表出する人格を入れかえることが出来るようになるため(運転を交代できるため)、クリムへの信用度を示すセリフとして作用している。

ロイミュードに恐れる人間を前に、シフトカーの力で動けるようになった泊だったが「多少動けるようになってもこのままじゃ」と語る。赤く染まっていく被害者の指先から早瀬のことをフラッシュバックすると、そこに霧子とトライドロンが登場する。

霧子の驚異的な身体能力はまま描かれるところであるが、彼女が泊に戦うよう迫る。また、この段階で泊はクリムを「ベルトさん」と呼ぶことになる。

ベルトさんは「変身したまえ。他人の運転は嫌なんだろう、君自身で乗りこなすんだ」と泊に迫る。これには上記通り、変身が運転と近い意味合いを持つことを暗示する。

霧子が変身を指し示す、また変身の方法を知っているような描写があるが、これは霧子がライダーになろうとしたらしいためであると考えられ、これについては後に描写がある。

ここで変身することになるが、「これから初乗り」「ひとっ走り付き合えよ」というセリフから、やはりこれがいわばスーツ型の車に乗っているような感覚の上にあることが分かる。

通常、「初めての変身なのにどうして技名がわかるんだ」などのメタ的な疑問が生まれる余地があるが、今作品ではクリムが変身等について説明役を果たすことで、その指摘を避けられる。つまり、泊自身は仮面ライダードライブについて何も知らないが、クリムが説明役を果たすことで、ヒーローとしての活動を円滑にしている。

「タイヤ交換」によるフォームチェンジも、やはり仮面ライダーのフォームをある種のスーツ型の車と捉えていることの延長線上と考えられる。

また必殺技のためにトライドロンを使用していることからも、トライドロンが仮面ライダードライブにとって不可分で不可欠な存在であることが分かる。

ただし、依然としてこの段階ではコアは破壊できていない。

霧子は泊にドライブピットを案内する。ライダーが秘密基地的な拠点を持つ例は、この以後通例となる。

破壊されなかったコアのもとにハートがやってきて、ハートが肉体を授ける描写で終わる。ハートが敵キャラであることを暗示している。